St. Valentine's Day
「あっ!」
熱いシャワーをたっぷりと浴びて、ふかふかと柔らかい極上のバスタオルに身を包んだ自分の姿が、明るい朝の陽射しが燦燦と差し込む広いバスルームの鏡に映っていた。
眩しいほどの太陽光線をキラキラと反射して銀色の輝きを放つ鏡の中からこちらを見つめているのは、念入りに施されていた化粧もすっかり落ちた素顔の「北島マヤ」だった。
若々しい弾力に富んだ白く滑らかな肌は、風呂上りのためほんのりとさくら色に染まっているが、その中でもひときわ鮮やかに色付いている部分が何箇所かある。思わず小さな叫びが彼女の唇から漏れた。
慌てて口を押さえた指先をそっとその部分に這わせると、脳内に昨夜の出来事がリアルな感触と甘い疼きを伴って正確なヴィジョンで再現された。自分の肌の上を自在に滑る真澄のしなやかな指先。ときおり痛いほどに強く肌を焦がしながら、身体中をくまなく探る彼の熱い唇。
初めは驚きと戸惑いの連続で、ただただ真澄が与える刺激に精一杯付いていくだけだった。だが、彼は一人で快楽の渦に身を任せることはなく、ゆっくりと時間を掛けて彼女の身体の中にも欲望の火が灯るのを待った。
マヤは自分の中にこんなにも強い欲望が満ちていたとは信じられなかった。真澄の手で、唇で、高まりで、一枚ずつ硬い蕾のヴェールが解き放たれていくように、彼の腕の中でマヤは「少女」から「女」にメタモルフォーゼした。
――速水さんが付けた紅い花。昨夜の嵐のような情熱のしるし。あたしはもう、"チビちゃん"じゃない…
頬を紅く染め、潤んだ黒い瞳でこちらを見つめている自分は、いつものように飾り気の無いままだったが、一晩にして彼女は美しく、艶やかに、根幹から変容していた。鏡の中の自分をうっとりと眺めながら、マヤは両手で愛おしげに自分の身体を抱き締めた。
――そう、昨日までのあたしとは違う。速水さんに愛された、この身体
コンプレックスの塊だったはずの自分のことが、自分のこの身体が愛おしい。愛されている――あたしはあの人に愛されているのだ。マヤは自分の中から強い自信と深い愛情が湧き上がってくるのを感じた。
…to be continued